沖縄に残った金城次郎の壺屋時代の雑器の美しい品物がまとめて観覧に供される。
イベント詳細
金城次郎は、1985年に沖縄県で初の人間国宝(国指定重要無形文化財保持者)に認定された「陶工」で、県内では「魚文の次郎」さんとしてよく知られている。しかし、その知名度のわりに、誤解されたり、よく知られているはずの功績が意外に評価されていなかったり、ということも多い。本展では、『人間国宝 金城次郎』の本当の功績はどこにあったのか、その真価を次郎さんの作品をとおして明らかにしたい。 まず、「魚文の次郎」さんとして有名なために、多くの人びとは魚文によって、次郎さんが人間国宝になったと考えやすい。しかし、実際は、文化庁の認定で「琉球陶器」の人間国宝になったのは、次郎さんが窯を読谷に移して魚文の大皿や花瓶をたくさんつくるようになってからの作品が評価されたのではなく、その前の、壺屋時代の伝統的なかたちや模様の日用品、マカイや皿、チューカーや酒器などの雑器が高く評価されたのだった。けれども、この壺屋時代の金城次郎作品の多くは、当時の沖縄では売れず、多くが本土に出荷され、今日それをまとめて見ることはきわめて難しい。本土でも、「次」のサインのない壺屋時代の品々は散逸していく傾向があって早急に蒐集がおこなわれる必要がある。 幸い本展では、沖縄に残った金城次郎の壺屋時代の雑器の美しい品物がまとめて観覧に供される。多くの沖縄陶芸のファン、また作り手の方々が金城次郎の本領がどこにあるのか、そして、「陶工」次郎の真価をどのように考えるべきかを、じっくりとその眼で確かめていただきたい。沖縄の赤い陶土と白化粧、伝統の加飾のための多様な技法が、次郎さんの手をへて、いかに美しいヤチムンを生み出したか。これは今後の沖縄の陶器のあり方、方向性をしっかりとしたものに構想するためにも、無二の澪標となることだろう。