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“自由”と“束縛”のはざまで、ものづくりは進化し続ける

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鎌倉彫伝統工芸士の小園敏樹さん。工房「青樹庵」から生み出される作品は、国内外で高い評価を受けています。また作品づくりだけでなく、その魅力を国内はもとより、スペイン展、アメリカ展など、海外へ向けて発信されています。「伝統の中にある革新」新たな作品を生み出し続ける小園さんを虜にする、ものづくりの魅力とは。

Items

鎌倉彫がまぐち

網代紋布張箱

梅紋雲板

小判欅紋の手繰り鉢


“遊び心”がある鎌倉彫の魅力



――こちらには色々な種類の作品がありますね。



小園敏樹氏:
お茶の道具の四方盆や、八寸盆。お菓子を乗せるお盆などの他にも、櫛比(しっぴ)皿、はし置き、カバンなどを作ったりしています。昔から鎌倉彫をエンブレムとしてカバンにつけたいと考えていたのですが、どうせつけるなら、もっと鎌倉彫が前面に出るような装飾的なものにしたいと思いました。それで今、カバン作家さんと一緒に協力して作っています。遊字アートの書道作家である吉田美穂さんと一緒に作ったものもあります。

作品づくりにおける私の発想の源は、携帯カバーや洋服の柄、カバンなど身近なものから涌いてきます。人を感動させることを意識し過ぎずに、こんなものを作りたいという簡潔な想いを出発点に、伝統も大切にしつつ自分の中で整理しながら、楽しんで作っています。

漆を乾かしていると、眠っていても漆の乾き具合が気になりますので、ぱっと目が覚めることがあります。好きだからこそ睡眠時間を削ってでも、やっていけます。円空(生涯で12万体の仏像を彫るという誓いをたてた、江戸初期の遊行造像僧。)が何千体という仏像を作ったのも、何か自分の中にある想いが、パワーとなったのではないかと思います。

――小園さんを寝不足にさせる鎌倉彫の魅力とは。



小園敏樹氏:
鎌倉彫の特徴は凸凹。鎌倉彫は、子どもが砂遊びをするような、“ゆらぎ”のような部分、鑿(のみ)にコシがあるだとか、色気のある線、というものが作品に表れます。多彩な漆塗り技法。これが鎌倉彫の魅力だと感じます。自由に作るから、同じものはひとつとしてありません。だからこそ、表現方法の幅が広くなります。鎌倉彫には遊び心があり、色々なものを取り入れる土壌があります。今は、彫刻の表現方法や変わり塗りの技術などを、色々な産地から学んでいます。

人を救いたいとか、祈りなど、ものづくりには色々な想いがあるかもしれませんが、私の場合は、ものづくりを通じて喜んでもらいたいという想いがあります。だからこそ、終わりもない。楽しいから、眠れない。私はこの仕事を十分楽しんでいるので、幸せだなと思います。



50年先、100年先にも楽しめる 鎌倉彫を届けたい



小園敏樹氏:
ある時お客さんが、私の作った大きな片口(銚子)を見て「これを、花瓶にしたらいいかも」とおっしゃいました。「棗(なつめ)の中に、指輪などを入れて楽しんでいるわ」などとおっしゃる方もいます。使い方は、人それぞれ。自由に使ってほしいと思います。もし傷んでも、手で大事に作ったものは直せます。長く使ってもらいたいので修理なども承っています。50年先、100年先にも、楽しみながら使ってもらえたらいいですね。

喜んでもらうには、しっかりとお客様の要望に応えなければいけません。要望が具体的であればあるほど表現の枠が狭まってきますが、その中で、喜んでもらえるように工夫します。

また「工芸品が、暮らしの中でどう活きていくか、光り輝くか」も考えます。使ってみて、喜びを感じられるものを作りたいのです。お客様が喜んでくれるからこその鎌倉彫です。色々なものが100円で売っているこのご時世にあっては、なかなか難しい部分もありますが、この工芸品の価値を感じていただきたいと思いまし、そうした時代の変化に対応できる力が必要だと思います。

――その中で作り手も変化してゆく。



小園敏樹氏:
私も一生進化していきたいと思っています。ゴールは見えません。昨日の自分より今日の自分。「一歩でも二歩でも進むために、どうしたらいいのか」と考える毎日です。工芸家は心も体も進化しなければいけません。色々なことを取り入れて、それを消化していく。

昔は庇(ひさし)がすごく長くて家の中が暗かったのが、今はマンションにも採光があって、明るくなっています。昔はそういった家の暗さから、鎌倉彫の落ち着いた色が流行っていました。でも今は黒・赤・白などのはっきりした色が好まれます。そういった生活面の変化も考慮しなくてはいけません。

“自由”の反対は“束縛”だと思っていますが、この束縛は工芸にはつきものです。鎌倉彫の匂いというのも、一種の束縛だと思います。束縛を飛び越えて自由にやることも出来ますが、それがあるからこその魅力を感じます。その魅力を作り手と買い手の双方が楽しめる鎌倉彫が私の理想です。それを求めて、この先もずっと進化しながら、作り続けたいと思います。

(取材・文 沖中幸太郎)

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