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こけしがつなげてくれる“絆” と“笑顔”

今回のお相手

こけし工人の梅木直美さん。父であり、師匠でもある梅木修一氏に師事し、蔵王高湯系の伝統こけしを継承しています。「周りの方々の応援で育てられてきた」という、こけし工人としての覚悟、向き合う姿勢とは。梅木さんの歩みとともに伺ってきました。

作品一覧

八寸 「黒頭 桜崩し」

八寸「細胴 桜崩し」

猫こけし

ずんぐりこけし

天使のこけし


こけしに表れる作り手の心



――周りの応援に支えられてきたのですね。



梅木直美氏:
なんども挫折しかけては、そのたびに助けられ、続けてきました。ある時、ある人から「あなたのこけしは個性がない」と言われ、大変落ち込んだことがありました。伝統こけしは、“伝統”を受け継ぐもので、絵柄や模様から「個性」が出るものではなく、最初は意味が理解できませんでした。それからショックで自信をなくしてしまい、しばらく筆を置きました。

そんな時に支えてくれたのは、やはり同じこけし工人の仲間でした。「もう無理だ」と弱音を吐くたびに、「絶対あとで良いことあるから」と励ましてもらいました。

また、11系統あるこけし工人が地域の枠を超えて一堂に会する『美轆会(みろくかい)』というのがあるのですが、そこの会長からも応援を頂いて、なんとか続けることができました。ふたたび筆をとるようになってからも「伝統こけしの中での“個性”とは何か」、ずっと頭の中で自問自答していました。

昨年、はじめて会長から「こけしの表情が良くなった。専業でやっていく覚悟が顔に表れてきた」と言われた時に、「個性は描き方ではなく、向き合う作り手の心だ」と気がつきました。自分の人となりや生き方が、筆に乗って表情に表れるのだと。こうして、愛好家や収集家の皆さんに支えてもらい、気づかされながら、こけし工人としての道を進んできました。

笑顔をつなぐ こけしづくり



――作り手の姿勢が表れるのですね。



梅木直美氏:
こけしを描く時は、いつも絶好調とは限りません。いろんな気持ちの揺り戻しがあって、どんな時でも笑顔でいる、まっすぐ向き合うというのは、なかなか大変です。しかし、向き合う姿勢が“個性”となって表れてくるので、作品の技術もさることながら、そうしたことを大切にして作っています。

私のつくるこけしは、決して笑っているようには描いていません。けれど、「癒される」と言ってくださる方もいます。仕事でストレスがあって落ち込んだとき、こけしを見た瞬間「ふっ」と緩んで癒される。それは、こけしの表情に本来の自分が持っている姿を見ているからだと思うのです。また、こけしを見て「かわいい」と和まされるのは、自分の赤ちゃんだったころの姿を眺めているからなのだとも思うようになりました。

――こけしの表情に、自らを眺めることができる。



梅木直美氏:
ある時、私のブログに「こけしを見た瞬間に笑顔で生きようと思いました。」とコメントを寄せてくださった方がいました。「笑顔になろう」じゃなくて「笑顔で生きよう」という表現に衝撃を受け、それが、こけしを通して私が伝えられるメッセージなのだと気づかされました。そして、頂いた言葉に私も元気を頂きました。私のエネルギーは人の笑顔なのかもしれません。その貰った笑顔の往復で、私もまた、誰かが癒されるこけしづくりをこれからも続けていきたいと思っています。


(取材・文 沖中幸太郎)

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