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尺八のすべてに向き合う

今回のお相手

遠藤晏弘尺八工房の尺八製管師、演奏家の遠藤鈴匠さん。製管師として、また演奏家として、尺八の魅力を広く発信されています。「尺八のすべてに向き合いたい」という遠藤さんの意気込みを伺ってきました。

作品一覧

翔(2尺)

翔(一尺8寸)

調(一尺6寸)

100年の歴史と責任



遠藤鈴匠氏:
遠藤晏弘尺八工房は大正元年に、東京の小石川で創業したのが始まりです。私の曾祖父に当たる初代遠藤晏弘は、もともと公務員でした。ところが、手先の器用さが近所で評判を呼び、尺八師の方に誘われ、この仕事にたずさわるようになったそうです。終戦後、二代目の祖父の時代に、疎開先の伊東から今の場所である練馬に移りました。

私はここで、製管師として尺八を作っていますが、演奏家「鈴匠」としても活動しています。尺八が好きというのももちろんありますが、作る上で尺八を演奏できる方が、使い手の心を分かった尺八づくりに活かせるからです。平日はここで製管師として尺八を作り、週末に演奏会に参加しています。

――こちらでは、尺八教室も開かれています。



遠藤鈴匠氏:
尺八教室は三代目である父のころから開いています。尺八を気軽に楽しんでほしいと、全く吹けない人にも音の出し方や指使い、楽譜の読み方などから教えています。20歳から80歳まで、夫婦でご一緒に学んでいる方もいらっしゃいます。

学びを重ね 尺八の世界へ



遠藤鈴匠氏:
私は三人兄弟の末っ子だったこともあってか、両親から家業を継ぐようにと言われたことは一度もありませんでした。ただ私自信は、身近な存在だったのもあって「将来は製管師になりたい」と、小学生の卒業文集に書いていました。中学生では、夏休みなどに母から箏を教わっていました。高校生になってからは、兄が尺八を吹き始めたことをきっかけに、私も箏から尺八に移り、兄が習っている先生のもとで学びました。

まだ家業を継ぐと決めていたわけではなかったので、進学先は色んなことを学べる大学で、かつ和楽器のサークルのあるところへ進みました。学生時代は、関東学生三曲連盟の集まりにも参加して演奏会を開くなど、積極的に活動していました。大学4年の一年間は、大学とは別に現代邦楽研究所研究科へ1年間通いました。卒業後は、さらに学びを深めるため、藝大の別科へ進み、同時にNHK邦楽技能者育成会へも通うなどして学び続けました。

――学びを重ねて、どんどんと尺八の世界へ。



遠藤鈴匠氏:
はじめは「好き」で始めた尺八でしたが、学んでいくうちにだんだんと、「継ぐ」ことを意識するようになっていきました。藝大の別科を修了したあと、親にお願いして工房で修行することになりました。もちろんいきなり仕事はさせてもらえず、ひたすら道具の扱い方を覚えるところから始まりました。今は一通りのことを覚えましたが、やはりまだまだで、分からないことは今でも三代目に教えてもらいながら、またお客様からの要望を聞きながら学ぶ毎日です。



ごまかしのない 本物の尺八づくりを



遠藤鈴匠氏:
お客様は昔からの方から、ウェブサイトを通して知ってくださった方々まで様々ですが、全国からご注文を頂いています。そうしたお客様への製作、修理を通して学ぶことも多くあります。また、やはり吹く人あっての尺八なので、そうしたお客様の反応が自分の喜びになります。

うちは1本の竹で、一本の尺八を作っています。歌口も水牛の角。中の下地は漆と砥之粉を混ぜたものを使っています。そのいずれでもない材料を使った尺八が世の中にはたくさんありますが、うちは本物にこだわり伝統の方法を守っています。

――伝統を守った本物を作り続ける。



遠藤鈴匠氏:
ただ伝統を守るのでなく、「なぜ竹を使うのか」ということを考えながら日々、尺八に向き合っています。伝統を受け継いでいく中で、自分の色を盛り込んでいきたいですね。今はまだまだ学びの途中ですが、そうして日々学んだことを、仕事に、そして演奏に活かし、皆様に、本物の尺八を届けたいと思っています。

(取材・文 沖中幸太郎)

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