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江戸切子の世界に邁進する

今回のお相手

国の伝統工芸士である堀口徹さん。数々の賞を受賞する作品から、普段使いの手元に届く商品まで、様々な江戸切子づくりに携わっています。三代秀石として、日々何を考え、江戸切子に向き合っているのか。師匠から受け継いだものづくりへの情熱、想いを、新たに構えた“堀口切子”の工房で伺ってきました。

作品一覧

黒被万華様切立盃

籠目ニ菊繋文切立盃

タンブラー(よろけ縞)

そば猪口(よろけ縞)

笑顔を生み出す江戸切子づくり 長く愛されるものを



――作品展では数々の賞を、受賞されています。



堀口徹氏:
この道に入って 2、3年目くらいに同業の先輩たちに認めてもらいたい、評価されたいという想いから、新作展に出品したのが始まりでした。おかげさまで最優秀賞まで頂くようになりましたが、最近は、作品を見てもらって「これ、お前のだろう」と言われるような自分らしさが出ている作品づくりが出来るようになってきました。

江戸切子のために人生を捧げたい、江戸切子を少しでも多くの人に伝えたいという覚悟や想いは、最初から自分にあったものではなく、こうした多くの方々からの評価と、それにさらに応えたいと自問自答するなかでだんだんと形作られてきました。

江戸切子づくりは私にとって、この世に存在するひとりの人間として、この世に存在しても良いのだという、自己存在を再確認できるものです。作品に対して「これいいね、綺麗だね」と喜んでもらえる。そういう時に、自分の人生には意味があると感じることが出来ます。

当然、始まりは自分自身のためでしたが、人のため、使い手のためということを考えて作品づくりをする。それが回りまわって自分に返ってくるということを強く感じています。

ある時、芸能事務所のマネージャーさんたちから、ある方の誕生日に自分たちでカットした切子をプレゼントしたいと相談がありました。自分のために一生懸命カットして作る光景は何度か見ましたが、第三者のためにというのは初めてで、自分はデザインを提案しただけでしたが、胸がいっぱいになりました。自分が持っている技術を可能な限り人のために出す。使い手のためと思っても、購入者の顔を直接見る機会はなかなかありませんが、使って喜んでくれる姿を想像し、想いを込めて作っています。

――どんなふうに使ってほしいとお考えですか。



堀口徹氏:
自分が感じる魅力や使い方を、お客様にもそのまま楽しんでいただけると嬉しいですし、一方で、全然違う使い方をされても、それで江戸切子を楽しんでもらえたら、新たな一面を見つけて貰えたとも思えます。例えば「そば猪口」だと、おそばだけでなくロックグラスでもアイスクリームやさくらんぼを入れてもいい。ジュレでもいいし、野菜の器にしてもいい。万能の器なのです。

ただ、長く使ってほしいので、お客様がどういうものを求めているかを感じることが大事だと考えています。その想いを感じて商品づくりに活かす。堀口硝子も堀口切子も全てオリジナルの形状でつくられています。商品の場合、同じように見えても、わずかな差で使い心地が違ってきますから、そうしたことにこだわりを持って取り組んでいます。

使う人がいてこその、ものづくりです。そうした周りのお声や想いが、次なる作品づくり、新たな挑戦へと自分の気持ちを鼓舞してくれます。

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