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無限の可能性を秘めた“印伝”の魅力

今回のお相手

山梨県甲府市にある「印伝の山本」。現在三代目として活躍するのが山本裕輔さん。日常に豊かなデザインを手軽に取り入れることができる印伝は、さまざまな年代に愛されています。そうした「愛されるものづくり」はどのようにして生まれたのか。進化する伝統を生み出す山本さんの軌跡を辿ってきました。

作品一覧

手帳型スマホカバー

二つ折り財布

長財布


輝きを放っていた父親の「盾」



山本裕輔氏:
私は小さい頃、プラモデルや粘土細工など、自分の手をつかってものをつくることが大好きでした。近所の自動車整備工場で働く大人たちを見て、「自分もいつか」と、自動車屋さんに憧れていたのを覚えています。

父も母も仕事が忙しかったので、私は勉強など何かを強制されることもなく自由奔放に育ちました。家では、ゲーム漬けの日々。当時読んでいた『ファミ通』という雑誌で、シナリオライターの記事を読んだり、掲載されていたシナリオの下書きノートを読んでいるうちに、自動車屋さんから、ゲームのプログラマーやシナリオライターという職業に憧れるようになっていきました。

――山本さんの将来像はゲームの中に。



山本裕輔氏:
RPGゲームにでてくるような“騎士”や、“召喚士”といった「士」のつくキャラクターに本気で憧れていたんです(笑)。ところが、私が中学校2年生の時に、そうしたゲームよりももっと自分を夢中にさせるもの出会いました。そのきっかけは、父の盾、でした。

――盾、というのは?



山本裕輔氏:
甲州印伝が伝統的工芸品に指定されたのち、父が伝統工芸士に認定されたんです。それでその時の、通産大臣から盾(認定証)をいただいて帰ってきたんですね。その盾が、なんだかゲームの世界のかっこいい「アイテム」のように見えて……(笑)。とにかくまぶしくてかっこ良かった。その時はじめて、ゲームの世界だけでなく、現実の世界で“士”のつく職業があるということを知り、自分も“伝統工芸士”になって、その「盾」をもらうんだと、そう考えるようになっていったんです。

伝統工芸で現代を生きるために必要なこと



――父親の「盾」が、この道に進むきっかけになった。



山本裕輔氏:
「家業を継ぐように」なんて一言も言われたことはありませんでしたが、その“憧れ”だけで十分でした。中学校卒業と同時に、印伝業界に入るつもりでしたが、進路指導の場で担任の先生から高校進学を勧められました。山梨県内にある総合学科の高校なら、これから印伝で生きていく上で必要な一般的な知識、パソコンのプログラミングの勉強もできるだろう、と説得されたんです。確かにそうかな、と。それで総合学科のある高校へ進学しました。

高校では、特にインターネット関連の勉強に力を入れていましたね。将来、自分たちの業界、印伝を多くの人に伝えるために役立てたいと思ったからです。ただ、だんだんと学んでいくうちに、高校の勉強だけでは不十分だ、もっと学びたいと考えるようになっていきました。

当時、テレビなどではしきりに「伝統工芸は斜陽産業」「商品が売れない」と報道されていました。そこで、印伝という伝統工芸分野で生きていくには、技術だけではなく流通やマーケティングといった経営の知識も必要だと、そのためには大学に進んで、もっと勉強する必要があると判断したんです。

ただ、それまでずっと高校を卒業したら働こうと考えていましたから、受験勉強はさっぱりでした。どうにか、現役で大学進学をできないかと考えた末に選んだのが、自己推薦。これなら、というかこれしか自分が大学に進学できる可能性はないと考え、面接では、ひたすら自分の経営ビジョンを説明しました。それで、なんとか大学に進むことができたんです。

地元を離れ、あえて首都圏にある大学を選んだのは、将来、甲州印伝を使ってくださる都市圏の生活を見てみたいという想いからでした。小田急線の満員電車、新宿駅のホームで寝ている人、リクルートスーツの学生、東京のお祭り、おしゃれな店構え、などなどさまざまな“都会の暮らし”を垣間見ることで、山梨だけでは見えない世界を見てみようと思ったんです。これは、その後、実際に商品を作って届けるにあたり、とても役に立っています。やはり実際に使ってくれる人のことが想像できないと、作っているだけでは届かないですから。

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